福祉に携わる人たちの現場を知る
保健指導と福祉サービス
あなたたち夫婦は都内のマンションで歳をとったお母さんと同居しているとします。
ある日、お母さんが脳溢血で倒れ、動けなくなってしまいました。
何とか一命を取りとめ、数カ月後には退院してきましたが、お母さんには言語障害と半身麻痔の後遺症が残りました。
あなたたち夫婦は共働きをしていますが、マンションのローンを払うためにも、仕事を続けなければなりません。
家族だけの力で、動けなくなったお母さんの介護をしていくのは難しそうです。
このようなとき、あなたの家族は国や市区町村が行う福祉サービスを受けることができます。
まずは、あなたの住む市区町村役所の福祉課に相談をしてみましょう。
市区町村役所の福祉課では、社会福祉主事、福祉行政職員のいずれかが相談を受け付けています。
社会福祉主事は、生活保護法や身体障害者福祉法などの福祉六法に基づいて、
地域で福祉サービスを必要としている人の相談に乗り、生活保護の適用や福祉施設への入所手続きなどを行う職種です。
福祉行政職員は、公務員試験の一般行政職で採用された福祉相談援助員であり、
障害者の義肢や補聴器・車椅子などの支給や費用の相談、施設への入所相談、職業相談、福祉事務職員への技術援助などを行うことを仕事としています。
福祉課の職員のアドバイスによって、あなたの家族とお母さんは、自治体が行ういくつかの福祉サービスを受けることになりました。
週に2回、月曜日と金曜日に区のデイサービスセンターという福祉施設に行き、デイケアという日帰りの入所サービスを受ける手続きを行いました。
また、毎週火曜日には、区の福祉事務所から公務員の老人ホームヘルパーを派遣してもらい、お母さんのお昼ご飯の支度とおむつの交換などをしてもらいます。
隔週の木曜日には保健所から保健婦が訪問してくれ、お母さんの健康状態をチェックしてくれることにもなりました。
予約制で、数日から1週間にわたり、福祉施設にお母さんを預かってもらうショートステイという制度も利用することにしました。
しかし、これで完全に自宅で介護ができるようになったわけではありません。
残る水曜日と隔週の木曜日には、お母さんが家にひとりっきりになってしまいます。
そこで福祉事務所から、福祉法人が設立する社会福祉協議会と、在宅介護支援センターに連絡をしてもらいました。
これらの施設には社会福祉士がいて、各種サービスのコーディネートや福祉相談に乗ってくれます。
結局、水曜日と木曜日には社会福祉協議会から派遣される老人ホームヘルパーに来てもらうことができました。
やっと一安心。
日本の福祉レベルは欧米に追いついたとはとても言えない現状のなか、あなたたち夫婦は本当に幸運といえるでしょう。
共稼ぎしながらも、何とかお母さんの介護をしていけそうですね。
ところで、以上の例からもわかるように、福祉の中心的な担い手である老人ホームヘルパーの所属先には、いくつかのものがあります。
最も多いのは社会福祉協議会、次に多いのが福祉法人から委託された民間団体、そして純粋な民間企業で全国各市町村によってばらつきがありますが、公務員ヘルパーはまだまだわずかです。
なお、シルバービジネスと呼ばれる民間企業や、自治体や福祉事務所は、老人ホームヘルパーの派遣のほかにも、さまざまなサービスを行っています。
たとえば、お風呂カーで各家庭を巡回訪問する「訪問入浴サービス」や「訪問看護サービス」などがそれです。
訪問入浴サービスでは、老人ホームヘルパーやボランティアたちが数人でチームを組んでお風呂を設置した車で家庭を訪問し、お年寄りの入浴を介助します。
訪問看護サービスは、上記の施設のほか病院・医院でも実施していますが、看護婦(士)や准看護婦(士)が医師とペアを組み定期的に家庭を回り、お年寄りの健康状態をチェックします。
これらを総称して「在宅ケアサービス」と呼んでいるのです。
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