医療に携わる人たちの現場を知る
救急車から入院まで
あっ!
ちょっとした不注意から、あなたは交通事故にあってしまいました。
車にはねられて、道路に横たわっています。
胸のところが痛くて、うまく息を吸うことができません。
はじめはハッキリしていた意識も、だんだん薄らいでいきます。
遠くにサイレンの音が聞こえます。
誰かが救急車を呼んでくれたようです。
救急車に乗って、事故の現場に到着したのは救急隊員です。
救急隊員は、通常消防隊員が兼ねていますが、なかには救急救命士を搭乗させている車もあります。
救急隊員と救急救命士の違いは、仕事の目的にあります。
救急隊員が現場で行える救急手当は限られており、簡単な処置しかできません。
救急隊員の役割は、迅速に病院へ患者を搬送することにしぼられているのです。
一方、救急救命士は「呼吸または循環の機能が停止した傷病者(DOA患者)に対し、(医師の指示のもとに)気道の確保、輸液、除細動(不整脈を治す)」を行うことができ、その役割は患者の救急救命措置ということになります。
新しい国家資格で、まだ現場には少数しかいない救急救命士が同乗しているなんて、あなたにもまだ幸運は残っているようです。
救急隊員が、倒れているあなたの状態を調べています。
どうやら意識がなく、呼吸が止まってしまったようです。
救急救命士は無線電話で病院にいる医師と連絡をとりあい、あなたの喉にマウスピースという特殊な器具を挿入して酸素を送りこみはじめました。
心臓マッサージもしています。
救急隊員と救急救命士たちは、これからずっとこうして医師と連絡をとりながら、あなたを救急車で近くの病院まで搬送していくのです。
病院に着くとあなたは救急外来に運ばれました。
ここには看護婦(士)と医師が24時間体制で待機しています。
大きな病院では、救命センターというセクションを備えるところもあり、救急外来看護婦や救急医療を専門とする医師が勤務しています。
救急救命士から、看護婦(士)があなたの全身状態と事故に関する報告を受け、それを医師に報告して引き継ぎます。
医師は看護婦(士)とともに、ただちにあなたの応急処置にとりかかります。
けがの部位や意識のない原因などがわからない場合は、簡単なレントゲンやCTスキャンをかけて適切な処置を考えます。
このために一部の大病院では、救急患者のレントゲンを撮るための診療放射線技師が待機していることもあります。
救急外来であなたの呼吸や心臓の拍動が回復し、血圧などの状態が安定すれば、あなたは病棟に運ばれます。
しかし一刻を争う場合は、緊急手術を行うこともあります。
また、いつ危険な状態に戻ってしまうかわからないようなときには、いったん「ICU(集中治療室)」に送られ、回復を待ちます。
ICUには、非常に症状の重い患者が入室しています。
ここでは24時間体制で、医師と看護婦(士)が患者の治療と観察にあたり、人工呼吸器や人工心肺装置などの複雑な生命維持管理装置が設置されています。
これらの操作と整備を行うのが臨床工学技士の仕事です。
臨床工学技士は、このほかにも腎臓機能の低下した患者に必要な、人工透析装置の管理と操作なども行っています。
さいわいあなたは病状が安定したため、病棟に送られることになりました。
そのときに、看護婦(士)と医師は診療録(カルテ)に、自分たちが行った処置やあなたの体に関するすべてのデータを記載して引き継ぎます。
カルテは病棟クラークや診療録管理士によって整理され、あなたの入院することになった病棟へ渡されます。
病棟クラークなどがいない病院では、直接外来から病棟へ送られることもあります。
病棟であなたを待っているのは、病棟看護婦と主治医です。
あなたの入院生活がはじまることになります。
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