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医療従事者のチームワークが不可欠
91年5月、日本生活協同組合連合会医療部会の総会で「患者の権利章典」という人権宣言がなされました。
ここでは、医療・福祉の受け手である患者を「闘病の主体者」という位置に置いて、次の権利と責任をもつものと定めています。
(1) 知る権利:病名、病状(検査結果も含む)、予後、診療計画、処置や手術(の選択の理由とその内容)、薬の名前や作用・副作用、必要な費用などについて、納得できるまで説明を受けることができる権利。
(2) 自己決定権:納得できる説明を受けたのち、医療従事者 の提案する診療計画などを患者が自分で決定することができる権利。
(3) プライバシーに関する権利:個人の秘密が守られる権利と、私的なことを医療従事者から干渉されない権利。
(4) 学習権:病気やその療養方法と保健・予防等について患者が学習することができる権利。
(5) 受療権:いつでも必要かつ十分な医療サービスを、人としてふさわしい方法で受けることのできる権利。また、医療保障の改善を、国と自治体に要求することができる権利も含む。
(7) 参加と共同:医療従事者とともに力を合わせて、患者が これらの権利を守り発展させる責任があることを示す。
しかし、これらの権利と責任を患者が実際に行うためには、医療従事者たちの協力が必要となります。
さまざまな立場から、患者にかかわる医療従事者たちが、それぞれの役務を正しく果たし、緊密に連携をとりあいながら、患者を中心とした医療・福祉を実践していくことが必要となるのです。
みなさんが目指そうとしている資格・職種の実際の仕事と立場を、まずは理解してください。
それから、自己の適性について考えてみてください。
カテゴリー:医療・福祉をとりまく流れ
IC(インフォームド・コンセント)と、QOL(クオリティ・オブ・ライフ)
近年、医療や福祉の世界でよく耳にする言葉に、「IC(インフォームド・コンセント)」と「QOL(クオリティ・オブ・ライフ)」があります。
インフォームド・コンセントを直訳すれば「説明と同意」、クオリティ・オブ・ライフは「生活の質」と訳されます。
クオリティ・オブ・ライフは、医療・福祉の世界だけでなく最近は社会のあらゆる場所でよく目にします。
ただし、この言葉を医療・福祉の世界で用いるときには、特に「医療の質」と訳すのが一般的です。
ところで、なぜこのような話をするのかといえば、「インフォームド・コンセント」「クオリティ・オブ・ライフ」の意味する内容が、現在の日本の医療・福祉が目を向けていこうとしている方向をよく表していると考えるからです。
当サイトを訪れ、医療・福祉の世界へ歩んでいこうと考えているみなさんにとって、現在の医療と福祉のあり方を知ることは、大切な心構えのひとつでしょう。
医療・福祉をとりまく流れ
患者の視点をとりいれた動き「IC(インフォームド・コンセント)」とは、医療・福祉の現場において、患者の納得と同意を得るためになされる医療従事者からの説明を指しています。
医療従事者とは、医師・看護婦・保健婦・薬剤師など医療の現場にかかわるすべての人々のことです。
患者が医療を受けるにあたって、医療従事者は、患者にその治療方針や治療・療養の方法を十分に説明し、理解と納得を得るべきである、という考え方を示すときによく用いられます。
この考え方は、米国などでは70年代から積極的に行われるようになっていますが、わが国では90年1月に日本医師会生命倫理懇談会が「『説明と同意』についての報告」をまとめ発表したことから、一般的となりました。
わが国の医療対策は、明治元年に西洋医学採用の方針が決定され、明治5年に文部省に設置された医務課により、明治7年、医青や医療・衛生制度を包括した「医制」が公布されたことにより始まります。
明治維新後の開国によって外国との交流が盛んになり、コレラやペスト・痘痕などの伝染病が流行し、伝染病対策が急がれたこともきっかけとなりました。
当時は国民の栄養状態もきわめて悪く、医師と薬品・病院の不足により医療の供給も十分ではなかったため、結核や肺炎などの伝染病・感染症による死亡率も大変高いものでした。
このようにしてスタートした医療体制でしたので、病院など医療施設の増設や、医師の育成と栄養状態・衛生状態の改善が、まずは政府のとった医療対策の眼目でした。
その後も関東大震災や金融恐慌・日華事変から太平洋戦争を経て敗戦へと向かい、国民の衛生と健康状態は悪化の一途をたどる一方でした。
政府は戦後48年に「医療法」「医師法」「保健婦助産婦看護婦法」などを改めて制定し、一層の医療体制と福祉・公衆衛生の充実に努めましたが、充実の主眼が、量的な増加に偏っていた感もありました。
わが国の医療・福祉施策を振り返るとき、サービスの受け手側から見る視点が、ずっとなおざりにされてきたことに気づきます。
本来、患者や障害者のためにあるはずの医療・福祉なのですが、設備の充足や医療従事者の養成と技術の発展ばかりに意識が向かい、人間の体を細かく分析して、物理化学や生物学の法則に従うモノとして扱うような「患者不在の医療・福祉」ができあがってしまったのです。
しかし現在、日本の医療施設・供給体制・栄養状態・衛生状態は、国際的にも十分に高い水準に達することができました。
そこでようやく医療・福祉の世界でも、改めて「患者の視点」に目を向けようという運動が起こってきています。
医療従事者は、ただ患者の病気を治せばいいというばかりではなく、治療の方針を正しく伝えて、了解をとるようにしよう。
治療や薬のなかには、苦痛や危険を伴うものもあるから、すべてを説明して納得してもらったうえで、患者とともに病気と闘っていこう。
といった考え方です。
治療に伴う苦痛や危険を受けるのは患者自身なのですから、これは当たり前といえばあまりに当たり前の話です。
「インフォームド・コンセント」という言葉をめぐる意識は、こうして生まれてきました。
では、一方「クオリティ・オブ・ライフ」とは、どのような意味をもっているのでしょうか?
「医療の質」と訳せるこの言葉も、前述した医療従事者と患者との関係のあり方を表す言葉です。
この用語は60年代に、先進工業国で「GNPで測られる経済成長が、必ずしも生活の豊かさや幸福につながるものではない」という反省に立って生まれたものです。
医療・福祉の現場においての「クオリティ・オブ・ライフ」とは、人間としての患者のライフ(生命・生存・生活・人生・生涯など)の質を意味します。
たとえば入院中の患者の生活や退院後の人生、リハビリ中における療養環境などを広い視野で捉え、その質を高めていこう、という考え方です。
たとえば痴呆症で寝たきりの老人がいたとします。
毎日ベッドに縛りつけられたままで話しかける者もなく、暗い部屋のなかで生涯を終えていったとしたら、この老人の人生は人間らしいものであったといえるでしょうか?
また、末期癌の患者がいたとします。
もう治癒の見込みがない人に、毎日苦しい副作用の起こる薬を与えてベッドに寝かせつけ、延命をはかっていくことが、本当に患者にとっていいことなのでしょうか?
「クオリティ・オブ・ライフ」とは、従来のような単に生命の維持や病気の治療だけに焦点を当てていた医療・福祉のあり方を疑問視し、反省に立つなかから生まれてきた言葉です。
「インフォームド・コンセント」とともに医療・福祉の現場において、近年、意識改革がなされた結果といえるでしょう。
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